第五話 割烹旅館 肴屋本店のあんこう鍋など
大洗でグルメを堪能できる場所として忘れてはならないのが、旅館や民宿、ホテルなど宿泊施設での食事です。
大洗に限らず、宿での夕食は旅の大きな楽しみの一つではないでしょうか。
大洗は飲食店で食べるグルメも美味しいのですが、旅館などでいただけるグルメも当然にして美味しいわけです。
そんなわけで、今回は大洗の旅館のグルメを紹介したいと思います。
このブログの最初の記事でも触れたように、ガルパンを観て以来、「いつか大洗に行ってあんこう鍋を食べたいなぁ・・・」と漠然と思っていました。
もっと厳密にいうと「大洗の肴屋本店さんに泊まって、あんこう鍋をつつきたい」と思っていました。
なぜ肴屋本店さんだったかというと、ガルパンのTV版及び劇場版で戦車が突っ込んだ旅館だったからです。
って、いちいち説明するのも恥づかしいくらいベタな理由ですね。。
でも、せっかく大洗で宿泊するなら「聖地」に宿泊してみたいと思うのが人情(?)。
そういうわけで、初めて大洗に行くと決めた時点で肴屋本店さんに宿泊することが前提でした。
その時すでに肴屋本店さんは人気の宿で予約が取りにくくなっていたのですが、あんこうが最も美味しいといわれる2月頃に運良く予約可能日があり、12月下旬の時点で無事、2泊予約を取ることができました。
すっかり有名になった肴屋本店さんの外観です。
肴屋本店さんは、明治から続く老舗の割烹旅館。大洗町の中心街に位置し、町散策目的で宿泊する際にも大変便利な立地にあるといえます。
店先では、看板娘のダージリンのパネルと肴屋本店さんの若旦那・大里明さんのパネルが出迎えてくれます。
宿名が記された布など玄関付近の雰囲気がいいですね。
では、宿泊一日目の夕食の紹介から・・・
肴屋本店さんは原則として、部屋で食事をいただく形式です。
部屋食はゆったりくつろぎながら食事ができていいですね。
こちらは、あん肝ポン酢です。
あん肝というと丸型のものが多い印象ですが、肴屋本店さんのものは正方形にカットされているのが特徴的です。
口当たりが実になめらかで、雑味が一切なく、繊細かつ上品なとても美味しいあん肝でした。(ちょっと形容詞が多すぎるんじゃないかと思われるかもしれませんが、本当に美味しかったんです)
ところで、「海のフォアグラ」とも称されるあんこうの肝ですが、フォアグラよりもあん肝の方が美味しいという人も多いようです。私も同感です。
あんこうの供酢です。
ちゅう心さんの記事でも書きましたが、供酢は湯引きしたあんこうの身や皮、肝などの7つ道具を、 肝と酢味噌を練り合わせたタレに付けて食べる料理です。
それぞれ食感の違う7つ道具も美味しいのですが、タレも実に美味しかった!
お刺身です。どれも美味しい(*^ω^*)
特にうにが美味しくて思わず唸りました。
カレイです。見た目以上にボリュームがあります。
ばい貝です。
爪楊枝で身を取りだすのですが、きれいに取りだすにはちょっとしたコツが必要(笑)
日本酒にも合います。
そうそう、この時いただいたお酒は大洗町にある月の井酒造さんの純米大吟醸。
丹念に磨き上げた酒造好適米「山田錦」が華やかな香りを放つとても美味しい日本酒です。
さて、こちらは、常陸牛です。
肴屋本店さんではオプションで料理を追加することが出来るのですが、一日目の夕食では「常陸牛の石焼き」と「鹿島灘はまぐり塩焼き」を追加していたのでした。
実は、女将さんに「こんなにたくさん食べられます?」と心配されたりしました(笑)
なんの、美味しいものは別腹なので大丈夫です!
というわけで、常陸牛を石焼きにします(^ω^)
そして、おろしポン酢でいただく。いうまでもなく絶品です。
塩も用意されていますので、今度は塩で。塩で食べてもうまい!
もう一つの追加メニュー「鹿島灘はまぐり塩焼き」です。
はまぐりの塩焼きって見た目からしていいですよね。それにしても結構大きなはまぐりです。
というのも、大洗で獲れる鹿島灘のはまぐりは日本古来の純国産のはまぐりで、外来種と違い粒が大きいのが特徴なのだそうです。
そういえば、大洗町のマスコットキャラクター・アライッペの口もはまぐりで出来ています。(参考:アライッペ |ゆるキャラグランプリ オフィシャルウェブサイト)
ただ、この鹿島灘はまぐり、近年では漁獲量が減り、地元でも稀少な存在になっているのだとか。
焼きはまぐりはこの蛤汁がたまりませんね。全部こぼさずにいただくのはなかなか難しいのですけどね。
このはまぐり、肉厚で旨みがぎゅっと濃縮されていました。
大きなはまぐりを贅沢に二つもいただいて、結構、お腹いっぱいになりつつ、女将さんの言葉を思い出したり(笑)
いやいや、まだまだ満腹になるわけにはいきません。
お待たせいたしました。冬の大洗のグルメの代名詞ともいえるあんこう鍋です!
(上から三枚目の写真にあるように実際は、序盤ですでに登場していたのですけどね(笑))
「いやぁ、これを食べるために大洗にやってきたんだよ!」とテンションが上がりました。
テンション上がりすぎてあまり写真が撮れていないです(笑)
さて、江戸時代から珍味として知られるあんこうですが、「西のふぐ、東のあんこう」という言葉があるように、プランクトンが豊富な常盤沖のあんこうは特に市場での評価が高いのだそうです。
そして、このあんこう鍋は、もともとあんこうに商品価値がなかった時代に漁師さんが漁船のうえで作った料理「どぶ汁」が発祥といわれています。
いまやすっかり茨城の冬の味覚として有名になりました。
大洗では醤油ベースのもの、味噌仕立てにしたものなど、各お店で独自の味を楽しむことができます。(註1)
肴屋本店さんのあんこう鍋は味噌仕立てでコクがありながらも、あんこうそのものの旨みが感じられるようあっさりした味わいになっています。
あんこうの味を左右するのは捌き方よりも下拵えにあるのだそうです。
各部位のぬめりを流水でよく洗うことが大切なのだとか。
大里明さん曰く「実は、この下ごしらえに一番時間がかかります。卸したあんこうの周りにまとわりつく、ぬめりをていねいに取りのぞかないと美味しいあんこう鍋にはなりません」(註2)なのだと。
なるほど、美味しいあんこう鍋は料理人が手間暇かけた賜物なのですね。
実際、肴屋本店さんのあんこう鍋はしっかり下ごしらえをされておられ、 とても美味しゅうございました。
大洗町であんこう鍋をつつきながら、大洗の地酒を呑む。「最高かよ」としか言いようがありません。
追加でこちらのお酒も。
同じく月の井酒造さんの蔵酒です。
まいわい市場さんの説明によると「最高品質の米を研磨して米の芯を生かして昔ながらの手づくりで造った絶品の地酒。酒の中の酒としておすすめいたします」とのこと。
いやぁ、本当に美味しかった。喉元をつるつるすべっていくようなお酒です。
そして、あんこう鍋といえば、欠かせないのが〆に食べる雑炊又はおじや。
肴屋本店さんの場合は雑炊です。
ところで、雑炊とおじやの違いを御存知でしょうか。
一般的には、炊いた米を洗って鍋に入れて作るのが「雑炊」。炊いた米を洗わずにそのまま鍋に入れて作るのが「おじや」といわれています。(註3)
よって、雑炊の方が御飯のぬめりが取れ、さらさらした食感になるわけです。
私はどちらも好きですけどね。
というわけで、さらさらした食感が美味しい肴屋本店さんのあんこう鍋の〆の雑炊です。
あんこう鍋の旨みが凝縮されていて、旨さが体に沁みわたります。
そして、もはやわずかであった胃の隙間を埋められ完全に満腹になるのでした(笑)
個人的な感想になるのですが、肴屋本店さんの料理は全体としてとても上品な印象を受けました。
というのも、素材の味を生かす調理と味付けをされていて、一品一品が実に繊細なのです。
すでに触れたように、料理の腕をふるっておられるのはこの旅館の若旦那・大里明さんなのですが、まだお若いのにその料理の腕前には本当に一流だと感じます。
しかも、大里さんは商店街や町の各イベントをはじめ各方面で大変御活躍されていて、日々、多忙なことと拝察するのですが、夜は厨房に立って、絶品の料理を作っておられる。本当に頭が下がる思いがします。
さて、長くなりましたのでこの稿はここまで。
次回は肴屋本店さんの朝食や二日目の夕食を紹介したいと思います。
それでは、また。
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(註1)参考資料:「常陸鍋ガイド」(大洗観光協会)、「いばらきの旬のさかな」(茨城県農林水産部漁政課)など。
(註2)『月刊 戦車道』増刊第1号(バンダイビジュアル株式会社)、45頁より
(註3)諸説あるとは思いますが、ここでは一般的な説を紹介させていただきました。